「潜戸」とは、もともと洞窟のこと。松江市の北部、加賀という地区にある洞門で、景勝地としても穴場スポットだ。とりわけ加賀の夕景は絶景として知られ、密やかなデートスポットともなっている。また、島根半島の潜戸鼻から続く断崖や入り江の海岸線は、大山隠岐国立公園に指定されるほど。
旧潜戸・新潜戸は通称で、古くに旧潜戸は「仏潜戸」、新潜戸は「神潜戸」と呼ばれていた。この呼び名からして、すでに神秘的な匂いがする。近くまで遊歩道も整備されているが、旧潜戸と新潜戸の両方を巡る観光船をぜひお薦めしたい。
新潜戸こと「神潜戸」は東・西・北と3つの入口が、ぽっかりと開いた広い洞穴なので観光船を乗り入れて探勝できる。長年の海食によって創り上げられた自然美は壮大で神々しい。船が洞穴に近づくにつれて、それまでの好奇心が畏敬の念に変わっていく。
船は「神潜戸」の西口から入る。すると、水しぶきの洗礼が・・・・。この水にかかると洞穴から出られない、という言い伝えに船上で思わず身構えてしまう。何だかゾクゾクと感じてきた。
洞穴の中に船が進むと鳥居が見えてくる。『出雲国風土記』には、佐太大神(松江市鹿島町の祭神)がここでお生まれになったとある。かつては加賀神社が鎮座する神域として、深く信仰されていたという。今でも古代からの信仰心が浮遊しているのだろう、自ずと神聖な気持ちになる。
出口となる東口でも、水がしたたり落ちてくる。この水は「乳水」と呼ばれ、母乳の出ない母親が飲むと、お乳が出るといわれる。
さて一方、旧潜戸こと「仏潜戸」。こちらは船を降りて上陸できる。仏潜戸は死んでしまった子どもの魂が集まる「賽(さい)の河原」。石が積み上げられ、子どもが愛用した着衣やはきものが供えられている。
幾世代も経て風化した供え物、その上に新しく積み上げられた石。海風にさらされた無数の石の塔は物悲しい。
「仏潜戸」の内部は薄暗い。鬼気迫るパワーがあり、寒気さえ感じて恐怖心が沸き上がってきた。この恐ろしさは遊園地のジェットコースターなどの比ではない。「仏潜戸」の正面に見える桂島にはキャンプ場があり、このキャンプ場では夜になると子どもの声を聞くそうだ。
神潜戸は荘厳なパワー、仏潜戸はミステリアスなパワー。いずれもかなりハイレベルのエネルギー。観光船が運航しているスポットなんて、とあなどることなかれ。
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