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黄泉比良坂(よもつひらさか)
先立った最愛の妻を慕って訪ねた「黄泉の国」の入り口。そこは、生と死の境といわれる地。
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◆ミステリアス総合評価 ★★★

神秘性★★★

歴史性★★★★

畏怖性★★★★★

癒し性★★

アプローチ難易性★★


◆ REPORT

〜人気のない山道の奥へ〜あなたは死者の世界の存在を信じるのだろうか。その筋のマニアたちには、以前からあるウワサが信じられていた。島根県のとあるところに、“あの世”と“現世”をつなぐ場所があると・・・・。
国道9号線を松江方面から安来方面に向かって走る。目指すは「黄泉比良坂」。黄泉とはむろん死者の世界のこと。
黄泉比良坂に着くには、東側と西側からのアプローチがある。今回は、じっくり探訪するために徒歩で西側からアプローチした。
住宅地に小さな標識「黄泉比良坂 徒歩3分」を発見。標識の矢印に導かれるように足を進めると、緩やかな上り坂となった。そこは、人が通った気配のない薄暗い山道。得体の知れない不安が沸き上がってくる。しばらく歩く。すると、今度は下り坂になって、その地は突然現れた・・・・。

〜心霊写真のメッカ!?〜そこには石柱が2本、まるで鳥居のように建っていた。2本の石柱には細いしめ縄が結ばれ、結界を示している。ここを潜ると死の世界だと言わんばかりで、肩にずしりと何か乗ったような気がした。
石柱の先には、石組みの台座の上に石碑が鎮座している。いつの時代のものだろうか。長い歳月、風雨にさらされた姿が物悲しい。
さらに、裏山の茂みの陰に2つの大きな石が置かれている。ひっそりと、こちらをうかがっているような表情で、物言わぬが故にかえって恐ろしい。気を抜くと、枝葉の茂みの中から何かが飛び出し、襲いかかって来そうな雰囲気だ。ここで写真を撮ると、心霊写真になる場合が多いと聞いた。
聖書の中では、「黄泉」は死者が裁きを待つまでの中間の場所とされている。『古事記』の中の「黄泉國」は、あの世との境界線とされる。
黄泉比良坂、ここは浮遊霊が彷徨っていても不思議はない場所なのである。

〜見てはいけないもの〜『古事記』や『日本書紀』に残された黄泉比良坂伝説では、かなり妖しいストーリーが展開されている。登場人物は男神イザナギと女神イザナミ。簡単に要約すると、このような内容だ。
『イザナギは亡くなった最愛の妻イザナミに逢いたくて跡を追い、死者の国である黄泉に行った。イザナギが妻を呼ぶと、「わたしも帰りたいと思います。黄泉の国の神に相談しますので、その間は決してわたしの姿を見ないでください」と言って、消えてしまった。
イザナギは待てども返事がないので、しびれを切らして辺りを見てしまった。そこには体にウジ虫がわき、ふた目と見られぬ妻の姿があった。
「あなたは、わたしに恥をかかせましたね」と怒ったイザナミ。
恐ろしくなって逃げるイザナギをイザナミが追いかけてきた。そこで、イザナギは黄泉比良坂にあった大きな岩で道をふさいでしまった。』

〜2つの大きな石の謎〜神話からすると、黄泉比良坂にあった2つの大きな石が死者の国を塞いだ岩なのであろうか。あの下に、死者の世界に通じる穴があるのだろうか。
じつは、この神話には続きがある。黄泉の国から帰ったイザナギは、けがれを落とすためにある泉でみそぎをする。その時、その左目から生まれた神が天照大神(あまてらすおおみのかみ)、右目から生まれたのが月読命(つくよみのみこと)、鼻から生まれたのが須佐之男命(すさのおのみこと)。神話の世界で有名な「三貴子」である。後に承知の通り、須佐之男命は出雲神話で大活躍する。
いわば、黄泉比良坂は神話のルーツとも言える訳だ。それゆえ、黄泉の国を“根の国”とする説もあり、これが「島根」の地名の由来になったとも云う。黄泉比良坂を探究するほどに、神話の面白さは深まるばかりなり。

〜黄泉の国から現世へ〜さて、余談。もろもろの神々を生んだ女神イザナミ。その亡くなった理由は、最後に火の神を生んで女性の大切な女陰を焼かれたからだと云う。産後が悪くて他界したイザナミを、現世の人々は女性の守神として崇めた。
夫の過ちを怒るのは当然、それより子どもをたくさん生んだイザナミは偉い! そう解釈した現世の人々はたくましい。ならば、黄泉比良坂にあった石碑には子宝のご利益があり、2つの大きな石は夫への戒めを象徴するもの?
なにはともあれ、ミステリーは深まるばかりなり・・・・。
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