多古の七つ穴(たこのななつあな)
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◆ミステリアス総合評価 ★★★★
神秘性★★★★★
歴史性★★
畏怖性★★★★★
癒し性★★★★★
アプローチ難易性★★★★★
◆ REPORT
島根県松江市に「島根町」という町がある。県名の由来に関わりがあるのかは分からないが…、この町は日本海に面していて小さな港町がたくさんある。夏になるとエメラルドグリーンの海を求めて海水浴客で賑わう。
島根半島の最北端に多古鼻岬がある。島根町は海岸線に桜並木が続くチェリーロードや加賀の潜戸の洞窟が有名で、多古鼻まで足を伸ばすことが少ない。なぜなら入り組んでいる海岸道を行くのが困難で、初めて訪れる人は、この先にまだ港町があるのか?と不安にもなる。近年、多古鼻に「マリンパーク多古鼻」というキャビンの宿泊施設ができたために、この辺りも整備されてきた。聞くところによると、「多古」という地名は千葉県の多古月町から多胡さんが来たという理由らしい。「鼻」は先端、岬という意味がある。「鼻」にもう一つ「岬」と同意語が付くくらい、多古は海に出っ張った地形をしている。
〜絶景!どこまでも続く海食崖〜島根半島は日本海の荒波で海食崖が長く続いている。また砂浜もあるので、海水浴は岩場も砂浜もどちらも楽しめる。穏やかに晴れわたる日は隠岐の島が見え、荒れ狂う波の日は道が通行できない時もある。その多古鼻の延長400m、高さ50mの海食崖の下に9つもの海食洞がある。海上からは入り口が7つ見えるので「多古の七つ穴」と呼ばれ国の天然記念物に指定されている。実は洞穴内部が通じているところもあり、穴は4つだとか? 小船なら通過することもできるようだ。陸からは行けないので、アウトドア派はシーカヤックやカヌーで行くのだが、沖泊港から漁船を出してもらうこともできる。人がなかなか行けないところがまた魅力である。
〜それはまるで迷宮への入り口のように〜私は瀬崎多古鼻線歩道から七つ穴を見ることにした。展望台からは海のパノラマが広がり、潮風も気持ちいい。海岸線が遠くなのか近くなのか分からないくらいに、きれいにくっきり見える。時おり船が行き来していて、映画「白い船」のように手を振りたい気持ちになった。夜ともなればきっと真っ暗な内海原に漁火が灯り、とても幻想的なことだろう。ここの展望台から七つ穴は遠くに見えるが「タコ」違いで、穴は「タコの口」のようにも見える。実際洞窟の中へ入ると波の音だけ聞こえ、自然の創り出す美に心奪われる。ザブン・・・、ザブン・・・と、いつ果てるとも知れない波音のリフレイン。佇んでいるうちにいつしか、永遠という迷宮に飲み込まれそうな気になって、それが洞窟の閉鎖的な孤独感とあいまって空恐ろしさへと変ってくる。
どちらにしても自然の雄大な光景は人間の力などを全く超越し、それをどう駆使しても作れない・・・魅惑に満ちて力強く、そして神秘的で、ヒトの非力を思い知らせる。日本海は未知なるパワーを秘め、今も刻々と自然の美を創造している。