松江城を仰ぎ見る古い街並みに佇む「李白酒造」は、明治15年(1882年)創業の老舗。原料の米にとことんこだわって仕込まれるお酒は、奥出雲産の「五百万石」「神の舞」をはじめ、兵庫県産「山田錦」といったグレードの高い酒造好適米だけを使用しており、どのランクのお酒を飲んでもふくよかな味わいと深いコクが広がります。かと思えば小気味いい後切れ感もあり、その絶妙なバランスに魅了されます。最近は「花酵母仕込み」という新しいタイプも登場。花から分離された酵母が使われており、品がよく膨らみのある香りと柔らかな旨みに注目が集まっています。
銘酒「李白」の名前は、中国唐代の詩人・李白(701〜762)にちなんで付けられたもの。中国の詩歌史上において杜甫(とほ)と共に最高の存在とされている詩人で、大変な酒豪で、酒をたたえた詩を多く作っています。李白と同時代を生きた杜甫も、「一斗の酒を飲めば百篇の詩を詠み、自らを“酒中の仙”と称した」と、李白のことを詠っているほど。
名付け親は、大正から昭和にかけて2度も内閣総理大臣を経験した松江市出身の政治家、故・若槻礼次郎氏で、李白と同じように酒を愛し、詩を愛していた人物。昭和5年のロンドン海軍軍縮会議には「李白」の菰樽(こもだる)を携えて行き、朝夕愛飲していたといわれています。「李白」のラベルに使用されている文字は、若槻氏の揮毫(きごう)を写したものだそうです。
現在、「李白」の活躍の場は地元松江や日本国内に留まらず、全世界へと広がっています。約20年前の香港輸出を皮切りに、アメリカ、シンガポール、ヨーロッパなどへ向けて出荷され、輸出が売上高の約3割を占めているとか。海外でも高い評価を受けている日本酒だけに、お土産や贈り物にと押さえておきたい一本です。
随所に高いクオリティーがうかがえる各種銘柄は店舗で試飲できるので、どういう味でどんな料理に合うのかなどスタッフに相談しながら選ぶと、お酒のうんちくも学べてお得。