島根県の東北部に位置する宍道湖は、淡水と海水が混ざりあう汽水湖となっている。この周囲四十七キロの広い湖の、松江市・玉湯町・宍道町・斐川町・平田市各水域で、季節ごとに海水の混じり方が異なる。こんな宍道湖で獲れる魚介類の中から、"宍道湖七珍"と称される独特な郷土の味覚が誕生しました。
しかし、宍道湖の魚介類はあまりにも多彩なため、七珍にしぼるまでには数々の議論があったといわれています。七珍の起源は、昭和五年(1930)、松井柏軒が松陽新聞に「宍道湖の十景八珍」を発表し、連載したのが始まり。しかし「アカガイやゴズ(ハゼ)が入らないのはおかしい!」「魚介類だけでなく、鴨も加えるべきだ」と当時の食通から意見が飛び交い、「八珍」が「七珍」になるほどなかなか論議は進まなかったといいます。宍道湖が豊かな湖である証拠でしょう。