松江は、京都、金沢に並ぶ茶処として知られている街。江戸時代、この地を治めていた松江藩第7代藩主の松平治郷(はるさと)公は、18歳で茶の道に入り「不昧(ふまい)」の茶号で“大名茶人”として活躍していたお殿様で、後に自らの流派である「不昧流」茶道を大成しました。その不昧公の影響により松江には茶の湯文化が広まり、現在では市民の日常生活に定着、お茶の消費量は全国平均を大幅に超えるほどなのです。
お茶とお菓子は切っても切れない関係。“茶処・松江”は、当然“菓子処”でもあります。1700年代後半の和菓子レシピ「菓子方書」、安政2年製の木型といった和菓子に関する貴重な品々が残されているココ「一力堂」は、松江城下の京店(きょうみせ)商店街に本店を構える老舗和菓子店です。江戸時代宝暦年間(1751年〜1764年)創業で、初代の三津屋作兵衛の頃から松江藩の御用達を務めたという老舗中の老舗。“不昧公御好み”として有名な「若草」、他所売りを固く禁じられたお留(とどめ)菓子「姫小袖」といった銘菓を筆頭に、松江の四季を感じさせる色とりどりの和菓子が甘い香りを漂わせながら並んでいます。
和菓子を味わったり購入したりすることはもちろんですが、コチラでぜひ体験してほしいのが、店主自らが手ほどきしてくれる和菓子作り(要予約)。2種類の上生菓子(練切り)を1時間ほどかけて作っていきます。菓子作りは一見難しそうですが手ほどきを受けながら形作っていくとなかなか楽しいもの。出来映えがちょっぴり不格好でも、苦労した分美味しそうに見えます。体験中、店主が松江の和菓子や歴史について楽しく語ってくれるので、目の前の和菓子や松江の食文化により一層深い趣を覚えます。